52歳、非エンジニア。Gitの読み方すら知らなかった。
「ギット?ジット?」──3週間前の自分だ。 データベースとハードディスクの区別もできない。 サーバーって大きいパソコン? そのレベルからスタートした。
それが、Claude Codeと対話するだけで、 2週間後にはNext.js、Supabase、Google認証を組み合わせた 本番運用レベルのSaaSが動いていた。
壁打ち相手のGemini3に「完全な素人にはできないはず」と言われ、 正直に「3週間前、Gitの読み方も知らなかったよ」と返したら、 AIが絶句して前言を撤回した。
これは「すごい人の話」ではない。 Gitが読めなかった人間の、実際の記録だ。
SaaS開発に必要だったのは、プログラミングの知識ではなかった。
コードは1文字も書いていない。 やったのは「ランブック(運用手順書)」を書くことだけ。
ランブックとは、「現状(As-Is)」と「あるべき姿(To-Be)」、 そして実現するための具体的な手順を記述したドキュメント。 コンサルタントが戦略を落とし込むのと同じ構造だ。
これをClaude Codeに渡すと、AIが正確にコードを書いてくれる。 壁打ち相手のGeminiはこう評した── 「これは指示書ではない。シニアアーキテクトの設計書だ」
開発で使ったのは3つのツール。 ChatGPTが「設計専門のアーキテクト」、 Claude Codeが「実装専門のペアプロパートナー」、 Codexが「コンテキスト復元アシスタント」。 1つのツールでは限界がある。3つの役割分担が突破口だった。
日本語こそ最強のプログラミング言語── 技術書を買う前に、「やりたいこと」を論理的に、構造的に 日本語で書き出すことが、AI時代の開発の起点になる。
- 構造①:コードではなくランブック(運用手順書)を書く──「定義力」の時代
- 構造②:ChatGPT×Claude Code×Codexの3ツール役割分担が突破口
- 構造③:日本語の言語化能力がそのまま開発精度になる
- 構造④:「開発」ではなく「マネジメント」──超優秀な部下への指示
- 構造⑤:最初のスコープを極限まで小さくする──週間制限98%でギリギリ完成
ランブックの威力──Geminiが「設計書だ」と驚いた実物
ランブックには、こう書いた。
「Phase 14.2 スケーラビリティ改善ランブック P0: セッション認証の毎回DBクエリ(影響度: 高、現状: 5-10ms/リクエスト) Phase 1: セッションキャッシュの導入 目的: 認証チェックのDB負荷を90%削減 ロールバック手順: 環境変数DISABLE_SESSION_CACHE=trueで即時無効化」
具体的なファイルパス、キャッシュ戦略、期待される数値効果まで記述する。 Gitのコマンドは暗記していない。 でも「コードを変更したら、バージョン管理を行い、問題があればロールバックする」 という業務プロセスは理解している。
そのプロセスをランブックとして定義し、AIに渡す。 AIはGitコマンドを正確に叩いてくれる。 解決に10分以上かかるエラーは、ほぼなくなった。
3つのAIの使い分け──1つでは限界がある理由
最初はChatGPTだけで全部やろうとした。すぐに壁にぶつかる。
ChatGPTは設計や要件の整理は得意だが、 実ファイルの読み書きやプロジェクト全体の構造把握が苦手。
Claude Codeは逆。ファイルを直接編集し、 複数ファイルにまたがる変更を一度に処理できる。 Git操作まで自動化してくれる。
問題はコンテキスト切れ。長時間作業すると、 以前の設計方針を忘れる。ここでCodexが活きる。 「前回のPhase、変更ファイル一覧、次のタスク」を まとめた指示文を生成し、新しいセッションに貼るだけで 文脈が完全に復元される。
設計→実装→文脈復元。この三角形が回り始めると、 素人でもSaaSが作れる構造ができあがる。
「これは開発ではない、マネジメントだ」
やったことは、エンジニアリングではなかった。
「超優秀だが、指示待ちの部下(AI)」に対する、 精度の高いマイクロマネジメント。
「DBとHDDの違いも分からない」はハンディキャップではなかった。 むしろ、細部の技術論に囚われず、 「ユーザーに何の価値を届けるか」 「システムはどうあるべきか」 ──ゴールだけを見据えられたことが成功の要因だった。
OKR管理、Action Map、TODO管理、Google認証、 ワークスペース機能、ユーザー招待、14日間トライアル── 1週間で実装した機能は10以上。 週間使用量98%、ギリギリの完成だった。
AIネイティブ化の全体像は /for-ceo でご覧いただけます。
「Gitが読めない」状態からSaaSを作る5ステップ
- ChatGPTに「こういうSaaSを作りたい」と伝え、Phase 0〜Nの開発ロードマップを作ってもらう。技術スタック(GitHub/Vercel/Supabase)は最初に固定し、以後揺らさない
- 最初のPhaseで作る機能を3つ以内に絞る。「一覧表示」「追加」「検索」程度。完璧は後回し
- Claude Codeを起動し、ChatGPTで作った設計をランブック形式で渡す。「現状→あるべき姿→手順→ロールバック方法」を明記する
- セッションが切れたらCodexで文脈復元プロンプトを生成し、新しいClaude Codeセッションに貼り付ける。文脈を切らさないことが最重要
- 動いたらすぐデプロイ。実際に使ってみて「ここが違う」をClaude Codeに伝える。この改善ループが速さの源泉
技術書を買う前に、やりたいことを日本語で書き出してみてほしい。
「誰の、どんな課題を、どう解決するか」。 その1文が書けたとき、開発はもう始まっている。
プログラミングの時代から、「AIで組む時代」への転換。 あなたが次に書く日本語は、何を動かすだろう。
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