企業価値2026-02-057分で読める

事業承継が止まるとき、何が継がれていないか

後継者を育てた。 引き継ぎの準備もした。 でも、どこか不安が残る。

「本当にこの人に任せて大丈夫だろうか」 「自分がいなくなったら、会社はどうなるのか」

後継者の能力に不満があるわけではない。 むしろ優秀かもしれない。

でも、何かが足りない気がする。

その「何か」を言語化できないまま、 承継を先延ばしにしている経営者は少なくない。

事業承継が止まる本当の理由。 それは後継者の問題ではない。

創業者の「内的企業価値」が、 会社の構造に埋め込まれていないこと。

内的企業価値とは—— 判断精度。胆力。空気感。 ひとことで言えば、経営者がごきげん♪でいる状態が つくり出す経営の質。

多くの会社で、 この内的企業価値は創業者個人に宿っている。 会社の構造には、なっていない。

だから、創業者が抜けると空白が生まれる。 後継者がどれだけ優秀でも、 「あの空気感」が消える。

事業承継とは、 事業を引き継ぐことではない。 内的企業価値を、個人から構造へ移すこと。

この視点がないと、 承継はどこかで止まる。

  • 構造①:なぜ創業者が抜けると会社の空気が変わるのか
  • 構造②:内的企業価値が「個人」に宿っている危うさ
  • 構造③:状態を構造に埋め込むという発想
  • 構造④:永続の道は、内的企業価値の構造化から始まる

構造①:なぜ創業者が抜けると会社の空気が変わるのか

創業者がいるとき、 会社にはある種の空気がある。

判断のスピード。 危機のときの胆力。 場を整える力。

社員はそれを感じている。 取引先もそれを感じている。 数字には表れないが、確実にある。

創業者が退くと、 この空気が薄くなる。

後継者は別の人間だから、 同じ空気は出せない。 それは当然のこと。

問題は、この空気が 創業者個人にしか宿っていなかったこと。

会社の仕組みに、 この空気を生む構造がなかった。

だから、人が変わると空気が変わる。 空気が変わると、判断が変わる。 判断が変わると、会社が変わる。

承継で「何かが違う」と感じるのは、 この構造的な空白のせい。

構造②:内的企業価値が「個人」に宿っている危うさ

内的企業価値—— 判断精度、胆力、空気感。

創業者の多くは、 これを自分の中に持っている。

それ自体は、素晴らしいこと。 その力が会社をここまで育てた。

でも、その力が個人にだけ宿っていると、 会社は「その人」に依存する。

・社長が元気なら会社も元気 ・社長が迷うと会社も迷う ・社長が抜けると会社が揺れる

これは、経営者の誇りであり、 同時に承継の最大の壁。

承継を考えるとき、 多くの経営者は「後継者」を見る。 「この人に能力があるか」 「この人に覚悟があるか」

でも本当に見るべきは、 「自分の内的企業価値が、会社の構造になっているか」。

なっていなければ、 どんなに優秀な後継者でも、 空白を埋められない。

構造③:状態を構造に埋め込むという発想

内的企業価値を、個人から構造へ移す。

これは抽象的な話に聞こえるかもしれない。 でも、具体的にできることがある。

判断精度を構造化する: ・判断の基準を言語化し、共有する ・重要な判断のプロセスを仕組みにする ・AIを活用して、情報の可視化と分析を日常にする

胆力を構造化する: ・危機対応のプロトコルを整える ・「判断を止めない」文化をつくる ・経営数字をリアルタイムで見える化する

空気感を構造化する: ・経営理念を「飾り」ではなく「判断基準」にする ・場を整える仕組み(対話の場、振り返りの場)をつくる ・経営者の状態が会社に伝播する構造を自覚する

これらは、創業者がいるうちにしかできない。 創業者がいなくなってからでは遅い。

承継とは、引き継ぎの日に起きることではない。 創業者が元気なうちに、 内的企業価値を構造に織り込んでいくプロセス。

構造④:永続の道は、内的企業価値の構造化から始まる

永続か、売却か。 事業の出口には2つの道がある。

どちらを選ぶにしても、 内的企業価値の構造化は必要。

永続の道を選ぶなら—— 創業者の内的企業価値が構造になっていれば、 後継者は「空白」ではなく「土台」を引き継げる。 会社の空気が変わらない。 判断の質が落ちない。

売却の道を選ぶなら—— 内的企業価値が構造化されている会社は、 買い手から見ても価値が高い。 「この人が抜けたら崩れる」会社は、 買い手にとってリスク。 「仕組みで回る」会社は、 買い手にとって安心。

企業価値倍増 × 経営時間半減。 この方程式は、永続でも売却でも効く。

そしてその起点は、 外側の施策ではなく、 経営者の内的企業価値を構造に埋め込むこと。

承継を考え始めたなら、 まず自分の内的企業価値が どこに宿っているかを確認すること。

それが、永続の道の第一歩。

内的企業価値の所在を確認する

  1. 自分がいないとき、会社の判断の質がどう変わるかを静かに想像してみる
  2. 「自分にしかできない判断」を書き出し、それが構造化できないか考える
  3. 会社の「空気」をつくっているものが何か、言語化を試みる
  4. 後継者候補と、判断基準や経営観について対話する場をつくる
  5. 自分の内的企業価値が「個人」と「構造」のどちらに多く宿っているか感じてみる

事業承継が止まるとき、 何が継がれていないのか。

後継者の能力ではない。 創業者の内的企業価値—— 判断精度、胆力、空気感—— が、会社の構造になっていなかったこと。

永続の道を選ぶなら、 この構造化が不可欠。

それは、創業者がいるうちにしかできない。

今の自分の状態を、 静かに確認してみてください。 その状態が、会社のどこに宿っているかを。

内的企業価値の所在を確認する

事業承継を考えている方へ。 後継者を探す前に、 自分の内的企業価値がどこに宿っているかを 確認してみませんか。 個人に宿っているのか、構造になっているのか。 その現在地が、承継の設計を決めます。

内的企業価値診断を受ける
← ブログ一覧に戻る