後継者を育てた。 引き継ぎの準備もした。 でも、どこか不安が残る。
「本当にこの人に任せて大丈夫だろうか」 「自分がいなくなったら、会社はどうなるのか」
後継者の能力に不満があるわけではない。 むしろ優秀かもしれない。
でも、何かが足りない気がする。
その「何か」を言語化できないまま、 承継を先延ばしにしている経営者は少なくない。
事業承継が止まる本当の理由。 それは後継者の問題ではない。
創業者の「内的企業価値」が、 会社の構造に埋め込まれていないこと。
内的企業価値とは—— 判断精度。胆力。空気感。 ひとことで言えば、経営者がごきげん♪でいる状態が つくり出す経営の質。
多くの会社で、 この内的企業価値は創業者個人に宿っている。 会社の構造には、なっていない。
だから、創業者が抜けると空白が生まれる。 後継者がどれだけ優秀でも、 「あの空気感」が消える。
事業承継とは、 事業を引き継ぐことではない。 内的企業価値を、個人から構造へ移すこと。
この視点がないと、 承継はどこかで止まる。
- 構造①:なぜ創業者が抜けると会社の空気が変わるのか
- 構造②:内的企業価値が「個人」に宿っている危うさ
- 構造③:状態を構造に埋め込むという発想
- 構造④:永続の道は、内的企業価値の構造化から始まる
構造①:なぜ創業者が抜けると会社の空気が変わるのか
創業者がいるとき、 会社にはある種の空気がある。
判断のスピード。 危機のときの胆力。 場を整える力。
社員はそれを感じている。 取引先もそれを感じている。 数字には表れないが、確実にある。
創業者が退くと、 この空気が薄くなる。
後継者は別の人間だから、 同じ空気は出せない。 それは当然のこと。
問題は、この空気が 創業者個人にしか宿っていなかったこと。
会社の仕組みに、 この空気を生む構造がなかった。
だから、人が変わると空気が変わる。 空気が変わると、判断が変わる。 判断が変わると、会社が変わる。
承継で「何かが違う」と感じるのは、 この構造的な空白のせい。
構造②:内的企業価値が「個人」に宿っている危うさ
内的企業価値—— 判断精度、胆力、空気感。
創業者の多くは、 これを自分の中に持っている。
それ自体は、素晴らしいこと。 その力が会社をここまで育てた。
でも、その力が個人にだけ宿っていると、 会社は「その人」に依存する。
・社長が元気なら会社も元気 ・社長が迷うと会社も迷う ・社長が抜けると会社が揺れる
これは、経営者の誇りであり、 同時に承継の最大の壁。
承継を考えるとき、 多くの経営者は「後継者」を見る。 「この人に能力があるか」 「この人に覚悟があるか」
でも本当に見るべきは、 「自分の内的企業価値が、会社の構造になっているか」。
なっていなければ、 どんなに優秀な後継者でも、 空白を埋められない。
構造③:状態を構造に埋め込むという発想
内的企業価値を、個人から構造へ移す。
これは抽象的な話に聞こえるかもしれない。 でも、具体的にできることがある。
判断精度を構造化する: ・判断の基準を言語化し、共有する ・重要な判断のプロセスを仕組みにする ・AIを活用して、情報の可視化と分析を日常にする
胆力を構造化する: ・危機対応のプロトコルを整える ・「判断を止めない」文化をつくる ・経営数字をリアルタイムで見える化する
空気感を構造化する: ・経営理念を「飾り」ではなく「判断基準」にする ・場を整える仕組み(対話の場、振り返りの場)をつくる ・経営者の状態が会社に伝播する構造を自覚する
これらは、創業者がいるうちにしかできない。 創業者がいなくなってからでは遅い。
承継とは、引き継ぎの日に起きることではない。 創業者が元気なうちに、 内的企業価値を構造に織り込んでいくプロセス。
構造④:永続の道は、内的企業価値の構造化から始まる
永続か、売却か。 事業の出口には2つの道がある。
どちらを選ぶにしても、 内的企業価値の構造化は必要。
永続の道を選ぶなら—— 創業者の内的企業価値が構造になっていれば、 後継者は「空白」ではなく「土台」を引き継げる。 会社の空気が変わらない。 判断の質が落ちない。
売却の道を選ぶなら—— 内的企業価値が構造化されている会社は、 買い手から見ても価値が高い。 「この人が抜けたら崩れる」会社は、 買い手にとってリスク。 「仕組みで回る」会社は、 買い手にとって安心。
企業価値倍増 × 経営時間半減。 この方程式は、永続でも売却でも効く。
そしてその起点は、 外側の施策ではなく、 経営者の内的企業価値を構造に埋め込むこと。
承継を考え始めたなら、 まず自分の内的企業価値が どこに宿っているかを確認すること。
それが、永続の道の第一歩。
内的企業価値の所在を確認する
- 自分がいないとき、会社の判断の質がどう変わるかを静かに想像してみる
- 「自分にしかできない判断」を書き出し、それが構造化できないか考える
- 会社の「空気」をつくっているものが何か、言語化を試みる
- 後継者候補と、判断基準や経営観について対話する場をつくる
- 自分の内的企業価値が「個人」と「構造」のどちらに多く宿っているか感じてみる
事業承継が止まるとき、 何が継がれていないのか。
後継者の能力ではない。 創業者の内的企業価値—— 判断精度、胆力、空気感—— が、会社の構造になっていなかったこと。
永続の道を選ぶなら、 この構造化が不可欠。
それは、創業者がいるうちにしかできない。
今の自分の状態を、 静かに確認してみてください。 その状態が、会社のどこに宿っているかを。